語り部シルヴァ

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『手を繋いで』

小さい頃から手を繋ぐのが当たり前だった。
お互いの両親が笑うのもあったけど、
幼馴染の君が喜んでくれるからずっと手を繋いでいた。

けど思春期と呼ばれる今、
手は繋ぐことは無くなってしまった。
厳密に言えば向こうが断ってきた。
「流石に恥ずかしい。」その一言から幼馴染は
隣すら歩かなくなった。今日も1人で帰っている途中だ。
俺も恥ずかしいのはわかっている。
今まで繋いでいたものが無くなると寂しくなる。
また...

なんて考えていると親から電話がかかってきた。
「もしもs」「幼馴染ちゃんの両親が...!!」

言われた病院まで走り病室まで走る。
肩で息をしながら病室のドアを開けると
俺の両親と幼馴染がそこにいた。
心電図が一定音を立てて医師と看護師が慌てていた。
「貴方たちは一旦外にいなさい。」
何が何だかわからないまま両親に廊下に放り出され
近くの椅子に腰掛ける。
さっきまで暑かった体は一気に冷めてしまった。

背中が騒がしい一方で幼馴染とは静かな空気が流れている。
気になって幼馴染の顔を覗くと、
とても暗い表情をしていた。俺に出来ることは...

はっと思いつき幼馴染の手を優しく包む。
(嫌なら振りほどいてくれ...)
そう思いながら幼馴染の手に触れる。

幼馴染を見ずまっすぐと向かいの病室のドアを見つめていると、隣から鼻をすする音が聞こえてきた。
そっと手を繋ぐと幼馴染が力強く握り返す。

深呼吸して幼馴染の方を見ずに幼馴染に伝えた。
「これからは俺が支える。
また昔みたいに手を取り合っていこう。」

「うん、ありがとう。」
幼馴染の声は鼻声で悲しそうだが、
どこか安心してそうだった。

語り部シルヴァ

3/20/2025, 10:21:48 AM