「勿忘草」
茜色の境界線。
空がゆっくりと燃え、見事な夕焼けが街を包み込む。
すべてが影になっていく時間。
銀色の光が最後の一瞬を惜しむように、雲の端を縁取っている。
隣には、影に溶けそうなほど真っ黒なクロ。
彼がふいに見上げた横顔に、私は「今」という時間の重なりを感じる。
温かな体温だけが、この曖昧な世界で確かなものだった。
足元に、ひっそりと揺れる勿忘草。
暗がりに沈む前の青い花びらは、まるで誰かが落とした忘れ物のようだ。
「忘れないで」という願いは、過ぎ去る光への静かな抵抗。
夜が来る前に、この紅い空とクロの鼓動を、
記憶の奥深くに、大切に刻みつけておきたい。
2/2/2026, 3:56:59 PM