お題 遠くの空へ
「結愛(ゆあ、仮名)!」
「ん?」
振り向くと、あい子(仮名)がいる。
「何?」
「知ってる? 今日、横須賀でバルーンフェスティバルがあるんだって! でもここからじゃ見えないね。結愛、どうしても見たいんだけど。」
「バルーンフェスティバルでしょ? だったら見えるよ。何時から?」
「14時から。」
「今日午前授業でしょ? 私は見えるよ。」
「え!?」
「私、生徒会長だもの。屋上で会議があるの。ホワイトボード出して。そのとき、ちょっと早く来てれば見れるよ。」
あい子は残念そうに俯く。
「うちはあいにく、今日から日曜まで富山だから。見えないよ。」
「そんなことないよ! 実際には見えないかもしれないけどね、遠くの空へ、「バルーンフェスティバルはこんな感じかな?」って思ってみれば浮かんでくる。ね?」
あい子を送り出すと、ふと、屋上に出た私。寝転がり、空を見つめる。遠くに、赤い丸いものがふわふわと浮かび、空の階段を駆けて行く。おそらく、あれがバルーンフェスティバルの開催を告げるものなのだろう。きっと、あい子も、どこかで遠い空へ願いを込めて、送り出しているのだろうな。
4/12/2024, 11:15:51 PM