雨の降る東京の街。湿度が高く人混みの中傘が空を覆う。東京に詳しい彼の背中を頑張って追いかける。
耐えない人混みの中、スクランブル交差点の信号待ち。優しい瞳の彼と目が合って、柔らかなくちびるが一瞬重なった。
「……したくなっちゃったから」
行こ、と言って空いている手を握られる。なんで彼女でも無いのにこんなこと、恥ずかしくて顔が真っ赤に染まっていく。咄嗟に俯いた。
「どした、大丈夫?」
「……だいじょーぶ」
「そぉ?疲れたら言ってね」
酔いそうな程の人混みも、蒸し暑いこの夏も、2人の歪な関係だって、きっといつかどーにかなる。
『夏』
6/28/2024, 1:02:06 PM