Episode.20 踊るように
目の前を横切る微風。
その微風に切られ落ちた緑葉。
ひらひら、はらはらと舞い落ちる。
今は9月上旬。
まだ暑い日々が続く中、四季は秋へと移り変わる。
光強く照らされ暑さに魘された夏も、もうすぐ終わる。
秋は好きだ。
肌に触れる気温が心地よく、紅葉や自然も綺麗に映える。
食欲、読書、運動の秋とも言うが、秋の全てが好きだ。
だが夏のように光り輝くような明るさは無く、ほんのり薄暗く物寂しい情景は慣れない。
夏から秋への季節の変わり目は落ち着かない。
夏の緑葉が秋の初風に吹かれて舞い落ちる。
ひらり、はらりと揺れ動く姿は、まるで踊るように役目を終えたことを告げる。
夏から秋より、秋から冬の方が葉は落ちる。
しかし夏から秋だって葉は落ちる。
この、最後まで輝き続けられなかった緑葉を見るのが寂しい。
でも緑葉も寂しいと思っているようには感じなかった。
なぜなら緑葉の舞い落ちる姿が、踊るように見えたからだ。
自分の意思で落ちた、そうとも捉えられる。
先程の秋の初風はどこかへ向かい、初嵐が横切る。
未だ木に残り揺られる緑葉は、舞い落ちた緑葉を気にかけることなく大勢で踊り続けている。
風が強く寒い、もうそろそろ帰ろう。
9/7/2023, 4:17:20 PM