カル

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[窓越しに見えるのは]

「あー、痛…。」

ずっとスマホを見て
凝り固まった首をぐるりとまわす。
下を向いていた目線を上げたその時。
ふと飛び込んできたのは、
白かった壁があかく染まった姿だった。
自然と窓へ目線が動く。
「あ、」
1番最初に浮かんだ言葉は、綺麗、だった。
隣の家もあるし、窓もそこまで大きいわけでもない。
しかしその間から、
あかとむらさきと少しのあおが、
やわらかく、つよく、部屋の中までもを
照らしていた。
そしてそれは、じわりと
目と頭の中に広がっていく。
「……。」
目線は窓のまま、
手から離しかけていたスマホを持ち上げる。

パシャリ

「…下手くそ」
見比べるも、やはり自然のそれを閉じ込めて保存するなど、そんなに簡単ではなかった。
しかしまあ、これを見て、
頭で思い出すことができたなら
それでいいのだと思い、
視界の窓に並べて伸ばしていた腕を下ろした。
もう少し見上げていたい気もしたが、
その光に染まった部屋にいるだけで満足だ、と思う。
目線も下り、手元に向かう。
しかし、初めより少し高い位置で。
白かった壁の変化に気づけるように。

7/1/2022, 2:17:16 PM