いろ

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【すれ違い】

 深夜にいきなり僕の家を訪ねてきた君は、僕のお気に入りのクッションを抱えこんでソファで背中を丸めている。あまりにも頻度が高いので、こちらとしても対応に慣れきってしまった。不服そうに唇を尖らせる君の前に、ハチミツを入れたホットミルクを置いた。
「また喧嘩したの?」
 問かければ堰を切ったようように、君の口から恋人への不満が噴出する。お互いにお互いを思いやっているが故の些細なすれ違いにしかいつだって聞こえないのだけれど、君にとっては深刻な問題らしい。適当に相槌を打ちながら、だんだんと涙声になっていく君の文句を聞き流す。
(何度も喧嘩して泣くくらい悲しいなら、とっとと別れちゃえば良いのに)
 君たちは二人揃ってあまりに人が良すぎるから、衝突してしまうんだ。こんな仄暗い感情を抱いてしまう性格の悪い僕ならきっと、君とすれ違って泣かせることなんて絶対にしないのに、なんて。口には出せない想いを胸の中に持て余しながら、僕は今回も黙って君の側に寄り添い続けた。

10/19/2023, 10:17:43 PM