Rikei

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「鏡よ鏡、世界でいちばん美しいのはだぁれ?」
白雪姫ではなくお后様に憧れたのか、女は私に尋ねた。
私は何も言葉を返せなかった。所詮ただの鏡である。言葉を発する鏡なんて、おとぎ話の世界に留めておくべきで、現実にあってはならない。だいたい、いい歳してそんなことを鏡に向かって聞くなんて馬鹿げている。実際、女が世界でいちばん美しくあろうとも私はそうは言えない、ひねくれた思考を持つ鏡である。

女は着信音で震えるスマートフォンを手に取り、画面の奥の誰かと話し始めた。男の声がする。どうやら明日、女はデートに行くらしい。だからか、最近は私の前で念入りなスキンケアをこなし、アイラインを引いては消してを繰り返し、心配になるほどアイロンとドライヤーを駆使して髪をいじっていたわけだ。

たった一人の愛する者のために、ここまで努力する姿を見ているのは私だけである。なのに、私は女に美しさを伝えることができなかった。

1/16/2026, 11:47:08 AM