字書き見習い

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某ゲームRS二次創作

古びた弦楽器を片手に男が歌う
優しく雄大しかしやがて悲しい時を迎える物語、謳うように厭うように
窓の外はすっかり日が暮れ訪れる寒さから守るかの如く暖炉の火が部屋を暖めてゆく
栗色の梁くすんだ乳白色の壁に滲むような陰色、渋く輝く銀の髪が揺れる
腰まで伸びる見事な銀の髪を持つ長身の青年はまるで夢見心地のようにその場で見てきたかのような迫真の面持ちで弾き語りを演奏する

爪弾く指は細いように見えて着実にコードを抑えていく旋律は軽やかにしなやかにそして物悲しく
すっかり聴き入っている聴衆達に静かに厳かに言い聞かせるような雰囲気がそこには存在した
やがて物語は終わりつかの間の静寂の後に暖かな拍手が沸き起こるその場にいる者達の精一杯の感謝の労い
銀の髪の青年は会釈をして再び腰を落ち着けると一仕事終えた相棒の弦楽器の手入れをし始めた

傍らに近づいてきた人物が質問する
「失礼、これは何の詩ですか?」

青年は柔和な表情で答える
「今はすでに喪われた旧き神々の時代の詩です」

青年が歌ったのは戦火ですでに喪われた旧時代の悲しい物語だった
絶望の涙で大地が覆われた後に生まれた歌、やがて人から人に歌い継がれその時代に生きた人々は歌の中で鮮やかに蘇るのだった

「哀愁をそそる」

11/4/2023, 11:31:29 AM