大地に寝転び、空を見たげると雲が流れている。
目を閉じてふと頭に浮かぶのは姉と過ごした日々。
1番鮮明なのは…
―春が過ぎ、夏に差し掛かった日。
僕は姉と2人で両親の墓参りに来ていた。
両親の墓は丘の上にあった。2人の出会いの地らしい。
墓参りを終えた僕と姉は2人で寝転がって空を見ていた。
色々な形の雲が流れていた。
綿飴のような雲、飛行機雲、猫の形の雲…色々あった。
見つけては報告、それの繰り返し。
お互いに見つけた雲を言い合っては笑っていた。
楽しかった、本当に。
僕には両親との記憶がほぼない。
僕が小さい時に交通事故でこの世を去ったから。
だから僕の中にあるのは姉との記憶だけ。
寂しくなかったと言えば嘘になる。
友達の家族との思い出を耳にする度、
近所の子供とその親の楽しそうな声を聞く度、
すごく苦しかった、寂しかった、なんでだろうって、
なんで僕にはその暖かい思い出がないんだろうって。
でも、そんな僕にいつも姉は寄り添ってくれた。
僕にとっての光だった。大好きだった。
だから--もっと一緒に居たかった。
気づくと辺りはオレンジ色に染まっていた。
どれくらいの時間こうやっていたのか、分からない。
ふと、顔に触れてみると涙で僕の頬は濡れていた。
『優しい思い出をありがとう』
届くかも分からない言葉を姉さん達が眠る墓に
置いていく。
-これでもう少し頑張れる、息ができる。
だから進もう。父さんや母さん、姉さんの分まで。
5/4/2023, 11:42:11 PM