XXXX年X月9日
霧が薄くなった頃合いを見計らい警察署の探索に向かう。
『幻創病』が原因と見られる怪事件の資料を探すためだ。
先日の事もあり警戒しながら移動するも、道中例の巨大な影は出現せず特段問題なく目的地に到着した。
南側工業地帯の開発で都市面積が拡大したことにより組織規模拡張のため一度移転が行われたという警察署は比較的新しく綺麗な状態で残っていた。当然資料室も大きく調べるには骨が折れるかと思われたが、想像以上に丁寧に管理されていたため資料は容易に揃えられた。
資料のスキャニングをする合間に少し調書に目を通したが、直視したくないような不可解で陰惨な事件が写真付きで多数並んでいた。後で検めるのが既に憂鬱だ。
事件調書の一つにカルテで見た患者の名前を見つけた。どうやら患者は当時の権力者のご令嬢であったらしく、被害者はその家族や使用人のようだ。蝶よ花よと育てられた令嬢の生み出した化物が身近な者を襲ったとは、なんとも皮肉なものだ。
8/8/2024, 11:25:59 PM