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【あの夢のつづき】
沙織、僕たちの出会いを覚えてる?
忘れもしない、僕たちの出会いはあの丘の上の小さなカフェだった。君は一生懸命勉強していたね。
僕は君の整った真剣な眼差しにすっかり魅了されてしまったよ。なんの勉強をしていたのかな?飲んでいたのは紅茶かな?僕がうっかりスプーンを落としたら拾ってくれて微笑んでくれたね。本当に嬉しかった。ちらと君が必死に書いていたのは、君の将来の目標だったね。

沙織は都心の会社に勤めてるみたいだね。毎日1時間かけて通勤してて偉いよね。僕も同じ方向の会社なんだ。同じ車両に乗ってるけど気づいてる?今朝は僕の方を見てたのかな。気づいてくれてるのかな。うれしいな。僕も沙織の会社を見に行ったことあるけど、あの有名企業なんだね。すごいね。育休制度とか整ってたりするのかな。最近の女の人は子どもを産んでも働き続ける人のほうが多いみたいだよ。君も僕との将来のことを考えてくれているのかな。最近君が帰り際、僕を気にかけて振り向いたりしてくれてるよね。嬉しいな。

最近、沙織の元気がないな。どうしたんだろう。昨日は警察に行っていた。心配だ。君の家から明かりが見える。日課の君のポストをチェックしたけど特に何も出てこない。君が出したゴミ袋も確認したけどご飯を食べれてないみたいだね。顔色も良くない。おかしいな。僕がなるべく君の支えになれるように陰ながら見守っているのに。

君が書いていた将来の目標を思い出す。君は将来転職して保育士になりたいみたいだね。いいんじゃないかな。僕と一緒に目指そう。この扉の向こうに僕たちの未来がある。大丈夫。沙織、勇気を出して。僕たち2人なら乗り越えていける。あの夢のつづきを2人でみよう。鍵は僕の手にある。愛の鍵だ。君のために作っておいたよ。

ガチャリ。

悲鳴。


1/13/2025, 10:21:53 AM