▶111.「ひそかな想い」
110.「あなたは誰」
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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〜人形たちの知らない物語〜
局長を探していたために時間はかかったが、
____はノンバレッタ平原に着いた。
ここでサボウム国の仲間と落ち合うつもりであった。
サボウム国からだけでなく、
フランタ国に潜入していた仲間も来て、三方で情報交換を行う予定だった。
春が近づき、戦場の跡を草花が隠し始めている。
数年もすれば、ここで何があったかなど、
予め知っていなければ見ても分からなくなるだろう。
____はしばらく仲間を探して歩き回ったが、
時間が経ちすぎていたためか、誰もいなかった。
ため息ひとつ、____は再び歩き始めた。
このまま南下していけば、サボウム国に入れる。
行きと違い、馬車も無くたった1人。
人と会うのは、立ち寄った村で労働をして食事を分けてもらう時くらいだ。
ひたすら、ひたすら、歩いていく。
心の中では繰り返し、盗み見たメカの構造を思い出していた。
技術局で研究していた最先端技術を惜しみなくつぎ込んだ傑作だ。
すごいな。
いいな。
自分も、作ってみたい。
消えぬ技術者としての魂が、____の命と希望を繋いでいる。
サボウム国の技術を入れたら、
もっと素晴らしいものができるかもしれない。
それに、私の人形づくりだって……
前例も根拠もない、夢想に近い構想を、
ひそかな想いとして描きながら、
一歩、また一歩と踏みしめていった。
2/21/2025, 9:43:03 AM