NoName

Open App

街はあんなに明るいのに、森に近い場所で暮らす私たちの村は月明りで過ごしている。
羨ましそうに街を眺める年少組は街で暮らせたら、とニコニコと笑いながら夢を語っている。

「おまえはどう思う?」

不意に訊ねてきた彼の意図が分からない私は内心首を傾げながら彼を見つめ返す。彼はバツが悪そうに視線を逸らした。

「おまえはいつか街に行くだろ」
「私が街に行くときは、葵くんも一緒だよ」

彼が息を呑む。静寂が流れる間もなく、アイアンクローをされた。なんで?!

「ハッ。なら、一生この森の中だな」

そう彼は嘲笑った。

7/8/2024, 12:29:24 PM