花の香りと共に
カランコロンとカウベルがなって、花の香りと共に、女性が2人入ってきた。
「あら、私のがカウンターよ」
「やだ『日の出』さんとの付き合いはうちの方が長いのよ」
「そんなに変わらないじゃないの!それより私の方が貢献してるわよ」
「マスター、どっちをカウンターに置く?」
「う〜ん、カウンターのスペースあんまりないからなぁ」
この店は、私が30年もやってきたが、去年ガンの治療のため一時たたんだ。だが、再開すると言ったらたくさんの常連さんから花が届いて、そんなに広くない店はいっぱいだ。
うん、まぁもちろん嬉しいんだが、常連さん一、ニの彼女たちにこんなケンカみたいなことにはなって欲しくない。
「そんなさ、自分たちの方が胡蝶蘭よりずっと綺麗なんだから、争わないでよ」
「あらん、いやね〜マスターったら」「そうねぇ、どこに置いても花は必ず枯れるけど、私たちはまた毎日来るわ」
「そうだよ!ほらこうして・・・」カウンターの上に、背中合わせに2つの鉢を並べて、入ってきた人が見える位置と、トイレに行ったり雑誌を取りに来た人が見える位置になった。
「これで、妥協してくれるかな、美人さんたち」
「うふふ、マスター口がうまいんだから!」
そう言いながら、二人は満足そうに胡蝶蘭に顔を寄せた。花の香りと共に、問題は解決したらしい。
No.139
3/17/2025, 12:34:24 AM