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『イルミネーション』

 チカチカ光る電飾が、一層私の孤独を引き立てる。

 数があるだけの電球たちに、「わあ綺麗」なんてはしゃぐ雑踏の恋人たち。子どもや学生なら微笑ましいその光景も、いい歳した大人だと少し滑稽だ、なんて。そんな捻くれた捉え方しかできないから、この聖夜に私は一人きりの帰路についているのかもしれない。

 クリスマスツリーを飾らなくなったのはいつからだろう。イルミネーションに足を止めなくなったのはいつからだろう。夜景に残業を想起するようになったのはいつからだろう。次から次へとイベント事に飛びつく世間に、寒々しさを覚えるようになったのはいつからだろう。

 少し大人になるたびに、私は夢を見なくなった。無垢な無邪気さを失って、冷めた思いばかりが取り残される。随分つまらない人間になったと思う。イベント事に大袈裟に騒ぎ立て浮かれるような滑稽な大人にはなりたくなかったが、あるいは今の私の方が滑稽なのかもしれなかった。

12/14/2023, 2:35:27 PM