万点

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       「きらめき」


高校を卒業し、社会人になった私。
田舎から憧れの都会に脱出した。
高い建物、カラフルなお菓子、お洒落な服。
どれも、私には初めての光景だった。
これからの生活が楽しみで夢が膨らんだ。

しかし、そんな夢は現実に破裂させられた。

先輩からのパワハラ、過度なノルマ達成意識、
強制的な残業により、帰りは終電ギリギリ。
その上、残業代は無し。

「こんなはずじゃなかった」壊れていく私。

毎日、会社に行くのが怖くて、目が腫れるほど。
体から水分が無くなるほどに、泣いた。

ある日、母から電話がかかってきた。
「頑張りよるね?」と母は聞いてきた。
私は震えた声で「うん」と言った。
母は何かを察したのか、
「会社辞めて、戻ってきな」と優しい声で言った。

私は、泣いた。足もガクガク震えるほどに。
久しぶりに人からの温もりを感じた。

次の日、私は会社を辞め、故郷に帰った。
相変わらず、私の故郷は田んぼばっかで虫が多い。
そんな景色を当たり前だと思っていたが。
今の私には特別な景色に見える。

実家に帰った私は、母の作った、夕食を食べた。
佃煮にひじき、ナスのみそ汁、どれも懐かしい味だ。

暗い表情をしていた私に、母は言った。
「頑張らんでいいよ。人の期待に答えんでいいよ。」

「なんで?」、心が壊れていた私は聞いてみた。

「だって、何かの為に頑張って心が折れたら元も子もないじゃん。毎日、100%じゃなくて5%で生き抜けばいいんよ。頑張り過ぎは体に毒だからね。」

「あと、あんた!人の為に生きてないだろうね!?
あんたの人生はあんたの人生よ!
過度に期待に答えようとするのは、優しさじゃない。
ただ、言いなりになってるだけ!」

「だから、あんたには自分らしく生きてほしいの」

母の言葉にまた、涙してしまった。やっぱり、
母にはかなわないや。そんな私を母は抱きしめてくれた。

その日の夜。綺麗な星空を眺めた。
都会の空は、濁っていてあまり星が見えなかった。
見る暇もなかった。
「星が綺麗だ」
年が経つうちに、私は自分への愛情を忘れていた。
誰がなんと言おうと、自分を守ってあげなくては。
「明日から、また、田植え手伝うか」
きらめく星を見ながら私は、夢を膨らましていた。

      END   フィクションです。



















9/4/2023, 1:13:57 PM