檸檬味の飴

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「はいこれ。今日中。」



「ごめーん!今日友達と遊ぶから、これ、よろしくねっ!」



「ここ間違ってるけど?何回言わせりゃ気が済むんだお前は?」





お金。
それはどんな綺麗事であっても、結局辿り着いてしまうもの。

愛。
それは同じ愛なんてなくて、一人一人違うもの。



「すいません」


「いや、すいませんじゃなくてさ。何でこんなことも出来ないの?」


「……すいません…」



謝罪。
それは……自分を下げるのに一番簡単な方法。



人からものを貸してもらったら、
「ごめん、ありがとう」



この世はなんて非常だろうか。


いや…違う。

勝手に世の中の所為にするな。


ただ、日本人が大きな譲り合いの精神と、
なぜかすぐ謝ってしまう国民性があるからだろう。

そうであって欲しい。

決して自分のせいではない、と逃げているのも、
日本人だからだ。

自分を自分で洗脳するしか、
逃げたり頭を空にして物事を進めたりする最善の方法がない。


「もうすいませんは聞き飽きたよ。はやく取り掛かってくれ。」

「はい…すいません」


とぼとぼと歩いて、どすんと自分の椅子に座り、じっと目の前のパソコンを見つめる。
机の上には空き缶と沢山のタスクと、付箋と…。

隣の同僚も目が虚ろだ。
スマホの黒い画面に映る自分は、自分じゃ無いような顔だった。


ぴろんっ


スマホの電源がつき、通知が来た様だ。

その瞬間、疲れが全て弾け飛んだ。




“今日の晩御飯、なにがええ?”



私はすぐに返信する。



“オムライス!”



すぐに既読がついたあとOKのスタンプが来た。


“了解!仕事がんばってな。家で待ってるで”


と、優しい言葉を載せて。







私、幸せだ。







お題:天国と地獄  2023/05/28

5/28/2023, 10:06:05 AM