とある恋人たちの日常。

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 今日、僕はこの街を去る。
 色々な思い出がある中で、この街にいることが少し辛くなってしまった。
 仕事の転機に、この街を去ろうと決めたのだ。
 
 最後に、彼女に会いに行く。
 この街に来たばかりの時に、車の修理屋で対応してくれた女性。屈託のない笑顔、スマートな仕事さばき、請求書に添えられる優しい一言。
 
 僕は彼女に恋をした。
 でも、彼女は既に人のものだった。
 
「いらっしゃいませー、修理ですか?」
 
 修理屋に行くと、彼女が出迎えてくれる。良かった。今日はシフトだったんだ。
 僕は点検と修理をお願いする。彼女はいつものように仕事をする。手際の良い姿はやはり素敵だと思った。
 
 胸がズキリと痛む。
 
「お待たせしました!」
 
 時間が経ち、修理が終わって、請求書を渡してくれる。それを見ると、『いつもありがとうございます!』と書いてあった。
 
「こちらこそ、いつも修理をしてくれてありがとう」
 
 そう伝えて支払いを済ませた。
 とびきりの笑顔は忘れない。
 
 僕は飛行場に向かう。
 最後に見せてくれた、彼女の笑顔は忘れることは無いだろう。
 
 どうか幸せに。
 
 
 
おわり
 
 
 
お題:君と最後に会った日
 
 
 

6/26/2024, 11:36:45 AM