◎手を繋いで
声よりも先に、後ろから迫ってくる足音で君だと気がついた。
振り向くといかにも残念そうな顔をするから、私はそこでやっと、君が私を驚かせようとしていたのだと察する。
ごめんごめんと謝り、機嫌をとるようにわたしは君に手を差しのべた。
私よりも随分と察しのよい君だから、どういう意味を持った行動なのかはすぐにわかったみたい。
でも君はすぐには握ってくれない。
私と同じように、けれども私とは少しズレた場所に、君の手が差し伸べられる。
あなたからどうぞ
君の目がそう言っている。
ようやく君の機嫌が元通りにできるというのに、今度は私の方がへそを曲げそうだ。
また君の声を聞きそびれてしまったのだから。
でも握る他に仕方がない。
この手を握ればすぐに、君の得意げな笑い声が聞こえることだろう。
そうすれば私達ふたりは途端に上機嫌になれるのだから。
12/9/2022, 2:16:31 PM