授業後、教室の前の方の席で女子がなんだか盛り上がっていた。
陰キャの俺には関係ないし、と帰り支度をしていると、女子の輪に男子も加わり始め、集団が大きくなりつつあった。
帰り支度を終えて後ろのドアをガラッと開けると、「ちょっと待って」と声がかかる。
「俺?」
「そう。この曲、知ってる?」
ラララ〜と口ずさみ始めたその曲に、聴き覚えがある。
でも、ラララと歌うその部分の前後に覚えはなく。
「聴き覚えはあるんだけど…」
「あああ、皆んなそうなんだよね…」
いつの間にかクラス全員が曲の一部を口ずさまれて、曲名を思い出せないドツボにハマっている状況。
「あ、曲を調べるアプリってなかったっけ?」
「わっ、頭良!」
アプリを入れて口ずさんでみる女子。
「ヒットしないんだけど」
「えー?」
他の奴らもアプリを使ってみるけど、わからず…
真相は闇の中。
だけどクラスは妙な一体感に包まれて、カラオケへ行こうと盛り上がっていた。
「カラオケ行く人挙手ー!」
カラオケへ行くと盛り上がっている輪から外れていた男子もパラパラと挙手をする。
普段は参加しない奴らのことを言い出しっぺグループが笑顔で歓迎する。
楽しそうだなと羨ましく思いつつも、ぼっちで陰気キャの俺は手を挙げる勇気はない。
そっとその場から離れると、「一緒にいかない?」と声をかけられた。
俺に曲名を知っているか質問して、ラララと口ずさんだ女子。
「今日、ちょっと、用事があって…」
「そっか。また今度ね」
バイバイ、と手を振って、グループの輪に戻って行く。
俺は盛り上がる教室を後にした。
さっきの女の子が口ずさんだラララが脳内で繰り返し再生する。
綺麗な声だったなあ。
あの子の歌声は聴いてみたかったかも。
それにしても、あの曲名はなんだ?
クラスの皆んなは忘れているだろうラララを俺は口ずさんだ。
ラララ
3/8/2025, 10:34:09 AM