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「目が覚めると」

二つ並んだベッドがきしんで、あなたがこっちに来る。その気配で目が覚めるが、まだ寝たふりをする。後ろからふわっと抱きしめらるまで。

「んー」

今起きたふりをして腕の中に入る。毎朝のルーティン。なぜか先に目を覚ますあなた。今度こそは、と思うのにいつも先を越されてしまう。

窓の外の小鳥のさえずり。カーテンの隙間から差し込む朝日。もう少しだけこのままでもいい?よくないか…

田舎の朝は早い。6時前にもう畑仕事に行く人の車の音がする。それを合図に今度こそ二人は起きる。カーテンを開けて思いっきり光を浴びる。窓を開けると小鳥がさっと逃げる。

「今日はどこに行くの?」
「酒井さん、野崎さん、村田さんの病院の付き添い」
「一度に三人も。大変じゃない?」
「大丈夫。行き先は同じだから。整形外科のリハビリ」
「頑張って」
「そっちも」

目が覚めるとあなたがいる。毎日更新されるこの幸せを誰かに感謝せずにはいられない。まずはあなたにありがとう。お日さまありがとう。私たちを受け入れてくれたこの村の人たちにありがとう。

7/10/2024, 11:46:13 AM