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蝶よ花よ

「こっくりさん、こっくりさん…」

西陽の入る教室で女の子が向かい合って
10円玉に人差し指を乗せて白い半紙に描かれた⛩️をくぐった。

一面の菜の花畑葉っぱに小さな青虫がとまり
食事中その頭の上をモンシロチョウがかすめた
見上げた青虫たちは、「おおきくなったら、なんになる?」と語り合った、「モンシロチョウより大きくて優美なアゲハチョウ」一匹の青虫が菜の花の葉っぱの向こうから遠くに広がる青い空を見上げて言った、「わたしは、あの飛べないけどよく走る頭に麦藁を被せモンシロチョウを集めるものになりたい」「えー、怖いよ、わたしは、鳥になってあの遠くに広がる青い草原を飛びたい」「えー、わたしたちを連れて行くの!?」それぞれに思い巡らす、だけど大きくなったら、この菜の花畑に育った青虫はモンシロチョウになるのでした。

お花畑をひらひらと舞うモンシロチョウになるのでした。

どんなに、遠く遠く離れても、その日に見た蝶と花を忘れぬように、覚えていること。

こっくりさんは、そんな文字を綴り⛩️の中に戻りました。

ハッと女の子たちは目を覚ましたように我に返りました、黄色い西日は、オレンジ色に変わりカーテンが静かに揺れていました。

「こっくりさんに前世を聞いたら、こんなことが起こった、同じ夢のような景色を見たよね!」とひとりの女の子が言うと、もうひとりの女の子が「うん、青虫だったわ、大きくなったら何になりたいか?って話してたの、広い菜の花畑の葉っぱの上で空をひらひら舞うモンシロチョウと青い空を見上げながら…」二人は顔を見合わせ、この一瞬が見せたデジャヴの共有が怖くなって急いでこっくりさんに帰っていただき、半紙を仕舞った。

下校を促す放送とチャイムが鳴り始め、彼女たちは慌てて教室を出た。

茜色に変わった揺れているカーテンの向こうの空で赤いきつねが笑ってた。


蝶よ花よ


令和6年8月9日

心幸





8/9/2024, 1:14:56 AM