“香水”
近所の薬局で買った香水。
関係ないのにどうしてか、貴方が思い浮かぶの。
優しくて、陽だまりみたいに暖かくて。
優しい、陽だまり、で君のことを思い出したよ。
初めて会ったのは、えっと、去年の秋頃、だったよね。
君に名前をつけたんだ。
月が綺麗だったから、“ツキ”なんて安直な名前だったけど。
名前を呼べば、すぐに傍に来てくれたね。
呼ばなくても、部屋に入れば足元に来てくれた。
体の上に乗って、一緒にお昼寝をしてくれた。
一緒に布団で寝てくれた。
本当はずっと、苦しかったんじゃないかな。
病気に蝕まれて、熱があって。鼻血をよく出してて。
本当にギリギリになるまで、気づいてやれなかった。
あんなに一緒にいたのに。
何もしてあげられなかった。
今年の四月。結局君は、いなくなっちゃった。
今でもふと、君の面影を追いかけるときがあるんだ。
掛け布団をちょっと持ち上げて「おいで」って言えば、君が入ってきて一緒に寝てくれるような気がして。
ほんとに今更だけど、君の身代わりになりたかった。
猫の身代わりになりたいだなんておかしいと思われるかな。でも、だって。
君はまだ1歳にもなってなかったろ。
いくらなんでも、短すぎるよ。
香水関係なくなっちゃったや。
8/30/2024, 11:25:13 PM