汚水藻野

Open App

 海が見たかった。
 人を愛してみたかった。

 自分みたいな奴にも、心はあるの。

 そう…………


 たとえ、自分のように小さな蟻でもね!!

 毎日毎日、仲間が「今日も人間に踏まれそうになった」って死にかけながら帰ってくる顔を見ている自分は、『人間は恐ろしいもの』だと思っていた。
 本当にやめて欲しい。
 今やこの世界の支配者は人間みたいな風潮がある。
 まあ認めざるを得ない、だって彼らは彼ら同士で質の高い意思疎通ができるんだから。
 彼らは自分たち蟻とは話せないし、なんなら犬とか猫とかしか話せない…と思う。
 『心』は誰にでもあって、時に傷が付くけど、時に愛で埋まる。
 そんな心が、蟻にもある。

 「俺最近海?行ったんだけどよ、青すぎてよ」
 これは、最近自分の友達の犬から聞いた話だ。
 海という場所、その存在を知ったのはこの話がきっかけだった。青い色をする『海』。
 どんな景色なのだろうか、と好奇心が芽生えた。
 「じゃあ、今度自分も連れてってよ。背中に乗せてもらえれば、自分も行けるんじゃない?」
 「おぉ、確かにな。今は長い時間主人といれるからな、日は近いと思うぜ。絶対ぇ行こうな!」
 「約束だよ」

 「てなわけで今度犬とデートしに行くので、この家は君に任せるから」
 「ええ……」
 「聞こえてるけど」
 「何も言っておりません。私めにお任せください。
何も心配することはございませんので、どうぞ楽しんでお過ごしください」

 「ありがと。
 ………蟻だけに」

 「女王様それは」

#2024.8.23.「海へ」
 蟻(女王)と犬(ダチ)と蟻(部下)。創作。
 なんか適当に書き出したらこうなりました。
 女王様は「ですわ!」口調じゃないです。

8/23/2024, 1:55:34 PM