小音葉

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帰らぬ亡霊と酌み交わす、可惜夜の一杯
あなたと生きられたなら良かったけれど
手を取り合うこと能わず、じきに別れを告げるでしょう
冷える肌を摩り、丘で一人

懐かしい背が遠ざかる
昇るあなたの美しいこと
追い縋り、引き留めたい
その唇を奪って穢してしまえば、傍で生きてくれますか
伸ばした手を切り落とす

初めて愛したあなたの瞳
針を溶かす優しい掌
この想いは届いていたでしょうか
最期まで、最期まで、終ぞ聞くこと叶わなかった
もはや灰に埋もれた結晶へ問うても返る言葉は無く

悪夢のような朝だった
骸と過ごした静寂の庵
絵に描いたような安らかな顔
私はまだ許していない
きっと生涯恨み続けるけれど
この一杯で、仕方ないから忘れましょう
夜が明ければ私は一人

(moonlight)

10/5/2025, 11:47:13 AM