中学生

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「なんで月はついてくるの」

後部座席の窓に張り付きながら親に尋ねた。
こんなに軽々しく月が動いてしまったら太陽系のリズムが崩れて万有引力の法則から地球は滅びてしまうことになる。

そしてもう一つ不思議な点は、観測者が止まっていると月も動かない。まるで後ろをついてくる不審者だ。

「目の錯覚だよ。本当は動いてないけど、月が大きくて遠いからついてきてるように見える」

おれは親をみた。
「さっかくってどういう漢字で書くの?月の質量は?地球と月はどれくらいの離れてる?なんで三日月の時があるの?そもそも月はどうやってできたの?月の裏側は?月に行ったことってあるの。重力はどうなってるの?」

親は前を向いて車を運転しながら一つため息をついた。

「錯覚の漢字は金に、昔で「さっ」つわかんむりに見で「かく」。月の質量は7.36 × 10の22乗。38万キロ離れていて、太陽の光と太陽系の動き方から三日月の時と満月の時がある。月ができたのはジャイアントインパクト説っていう昔の地球に隕石がぶつかってそれの破片が月になったっていう説が濃厚だけど諸説あり。月の裏側は地球を隕石をから守り続けてボコボコなんだ。人類は月に行ったことはあるよ。重力は日本よりも弱いんだ。つまり、地面に押し付けられる力が小さいから、びよーんってたくさん跳べる」


「ふーん。月の質量はどうやって求めたの?22乗って、10を22回かけるの?たとえば2の3乗は2×2×2で....ええと、8?
太陽系の動き方は図鑑で読んだ。でも、それなら月とかが消える時もあるはずじゃない?地球の影で光が届かない時があるはずだよ。
そっか、地球より小さいんだ。だから重力も小さいんだね。ふーん。」

「やった....すごいね。そうそう、一回教えた通り10を22回かけるんだ。そんで、2の3乗は8であってる。それって、中学生レベルだよ。本当にすごい。
うん、そうそう。よく気付いたね!大人でも太陽系のリズムを理解してる人は少ないのに、理解した上で違和感を指摘するとは。
そして、その考えはあってる。月が消える日があるんだよ。今日は満月だね。明日から欠けていくでしょ?毎日観察しにいこうか。」

「うん!」

「質問の仕方が天才児のそれだな。なぜなぜ期とはいえ。ほんとに。....本屋にでも寄ってく?」
「いく!!」
「ふふふ、行こっか。特別になんでも5冊買ってあげるよ。」
「全部図鑑でも?」
「....ごめん、前言撤回。図鑑は2冊までで...不甲斐ない親ですみません」

「....」

俺は友達の家に泊まりに行った時のことを思い出す。
友達の親に質問しても分からないとだけ言われた。わからないはずがないと思ったが、黙っていて翌日、親にそれとなく聞く。大人は何も知らないことを知る。

何も知らなくても、生きていけることを知る。

「....別に、不甲斐ない親じゃない」
「ふふっ、いつまで言ってくれるかな?ありがとう」

#星を追いかけて

7/22/2025, 4:26:18 AM