どすん、と鈍い音が響く。
女性は駅で尻もちをついていた。足早に去っていく、灰色に身を包んだ男性を睨めつけたが、同じような色に紛れて、怒りを向けるべき相手はもうどこにもいない。
狭い駅にこれだけいっぱいの人が居れば仕様がないことは分かる。女性は邪魔にならないようすぐに立ち上がって、目的地に向かった。家にかえる頃には、そんな出来事があったことすらすっかり忘れていた。
別の日、女性は急いでいた。電車が事故があったために大幅に遅れていたのだ。人の波の間をぬって女性は走った。
どすん、と鈍い音が響く。
女性にもそう軽くない衝撃が感じられたが、転ぶほどではなかったので、気にせず目的地に急いだ。
10/19/2022, 2:27:29 PM