title:私の冬
theme:冬になったら
──冬への憧れとは何だろう。
空気が澄んでいて、星も夜景も、灯がより鮮明に見えるだとか。夜長の一日を好きなように過ごせるだとか。ひとつ息をすれば、色のついたそれが白煙となって宙を舞う様だとか。雪景色がうつくしいだとか。生物の生命活動を止めさせる、絶対的であり不可侵の静謐だとか。
それが私の冬への憧れである。
けれども冬になった途端そんなことを考えなくなる。
寒さに耐えつつ、日々無味乾燥として生きていくのみだ。
今年も冬が来れば、私の冬は、また私自身の日常に飲み込まれる。そうして次の年の春になり、ようやく私生活から吐き出される。私の冬は、ぐちゃぐちゃのべちょべちょに変わり果てた姿で、かすかに息を吹き返すのだ。
11/18/2024, 2:31:41 AM