【89,お題:友達】
『私は、いつか海を見てみたい』
それが、友達の最後の最後の言葉だった。
ザァァァァァァァ.........
冷たい雨粒がアスファルトを打つそんな夜
友達はその硬いアスファルトの上で、動かなくなった
「みゃぁ......ぅにゃおぉ...」
前足で引っ掻こうが、耳を噛もうがピクリとも動かない
いつも頭を撫でてくれた手は、石のように硬くなって地面に落ちている
共に眠りについた時暖かかった身体は、今はほんの少しの温もりも残っていない
目は濁りきって、悲しそうに地面を眺めていた
『私は、いつか海を見てみたい』
海がなんなのか、この猫は知らない
しかし、この友達がもう自力で動けないことは猫でも理解できた
ならば、自分が海を持ってくればいいのだ
猫は走り出した、今は亡き友の願いを叶えるため
10/25/2023, 2:17:05 PM