あぃ。

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お題:遠い日のぬくもり #2

※イケメンヴィラン 闇夜にひらく悪の恋より
エルバート・グリーティア×コテキャ※

夢思考・タヒネタ苦手な方はブラウザバック推奨






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ある暑い夏の日の夜だった。

僕とエルバート様は、共に浜辺へと足を運んで
二人で一緒に 海を見ていた気がする。

二人きりで、誰にも邪魔されずに 水平線の向こうを見ていた時間は 何より大切で、何より守りたいものだった。


守りたいものの、はずだった。


その日は突然やって来て、エルバート様は亡くなった。
水平線を眺めた翌日の任務で。

僕はその時、お城でエルバート様の帰りを待っていた。
帰ってきたエルバート様は 冷たくて 動かなかった。

僕はそれを見て逃げ出していた。
信じたくなかったからだ。

大切な人の死など、信じたくなかった。
受け入れたくなかった。

数年、クラウンの皆の協力あってなんとか食事は取れるくらいに
回復したけれど、やっぱり 未だ夢に見る。

かつての遠い日のぬくもりを。

あの海で、水平線の向こうを眺めた夜の情景が
鮮明に脳裏に浮かんで、こびりついて、離れない。

エルバート様と交わした愛の言葉の数々。
僕はそれを、頭の中で永遠と再生する。

人が一番最初に忘れるのは、声だ。

エルバート様の何かを忘れるのが、僕は怖かった。
だから毎日、毎日 寂しい夜にエルバート様の声を添えた。

そんな僕を見て、ケイトさんは心配を隠さなかった。

''…テルミー君、私でよければ 力になりますから''

ケイトさんはそう言った。
エルバート様と似た、寄り添うような優しさ。
ケイトさんを見ると、ふとエルバート様を思い出して 辛くなる。

''僕は、平気 です。ごめんなさい 心配をかけて。''

正直、心内は平気とは言えないし、今すぐにでも泣き出したい気分だった。だけれど、それは僕のプライドが許せない。

僕が泣いたら、悔いを残して逝ってしまったエルバート様が
不安でいてもたっても居られなくなってしまうから

…けれど、そのプライドとは反対に 声は震えていた。

''そう、ですか… ''

ケイトさんはなんと言うべきか、言葉に詰まっているようで。

''じゃあ また、何かあれば呼んでくださいね テルミー君''

悩んだ末に、僕を放って置いてくれたのだろう。
優しく微笑んで、ケイトさんは部屋を後にした。

ケイトさんが部屋を出た瞬間、ぽとりと一滴の雫が床に落ちた

自分自身の、涙だった。

それに気付いた瞬間、僕は急いで涙を拭った。
泣くな、泣くな。エルバート様が 心配してしまう。

そんな事を思いながらも 涙は止まることを知らない。
最後には 拭っても目から溢れる程の大粒の涙が音を立てて流れた

ベッドの上に力なく座り、涙を声も上げず素直に流す。

エルバート様は 今、どこで何をしているのだろう
幽体のまま、僕の傍に来てくれたのなら__

そんな事を考えている内に泣き疲れて、眠くなって
僕はぽすんとベッドに横になり、眠りについた。


今日は珍しく、此処が夢の中であると認識出来た。
周りを見渡すと、雲のような 幻想的な空間で。

ひとまず歩いてみることにした。
何もない。真っ白で 浮いているような感覚でさえする。


しばらく歩いていると、ゆらりと人影が見えた。
僕はその人影を見た瞬間に固まった。

金糸のようなサラサラとした金髪に
陶器のように艶やかな肌。
シルクのマントを羽織った、ビスクドールに似た美しい人物

その人物はこちらに気付くと、ゆっくりとこちらに近付いて来て

''……テル。''

僕の目の前まで来ると、優しく微笑み 僕の頭を撫でた。

''える、ばーと…様、?''

''…うん。…そうだよ テル。''

エルバート様だった。夢の中だと言うのに、妙に感覚がリアルで
いつの間にか僕の額を流れていた涙を、
エルバート様はそっと拭った。

''なんで、どうして ここに''

''……テルが、泣いていたから。…逝くに逝け無かった。''

''俺のせいで、寂しい思いを させてしまったから''

エルバート様は 悲痛に耐えるような顔でそう呟いた
やっぱり、この人は優しすぎる。

''…エルバート様の馬鹿…!''

''なんで 死んじゃったんですか…!!''

夢であるならば、文句の一つでも言ってしまえと
涙ながらにエルバート様を抱きしめて、そう言った。

''…ごめんね''

エルバート様も僕の腰に腕を回し、ギュッと抱きしめ返した
まるで離すのが惜しいように

''…僕も、一緒に連れて行って欲しかった…''

離れ離れになるくらいならば
永遠と続くような悲しみを味わうくらいなら
エルバート様と共に逝きたかった

これが 僕の本音だ。

それを聞いたエルバート様は 少し目を見開いた。
そして、少し考えるような仕草をして

''……俺も、テルと一緒が良い。''

''離れてしまうくらいなら、いっそ 連れ去ってしまいたい''

エルバート様は淡々と口にしたけれど
その瞳は深海のように暗く、憂いを帯びていて

その瞳を見てしまうと 何も言えなくなる。

…だけど 此処で言わなければ 永遠の心の苦しみを味わう事になる
だから僕は言った

''…じゃあ、エルバート様の思うように してください''

''僕を、そっちに連れて行って''

クラウンの皆には迷惑をかけると思う。
ケイトさんも悲しませてしまうだろう

だけれど、それでも良い。
僕は、エルバート様と一緒が良い。

エルバート様は言葉を聞いた瞬間、 一瞬だけ笑みを浮かべて
僕の手を、そっと取った。

''…分かった。……おいで、テル。''

''はい、…エルバート様''

僕は少しの微笑みを浮かべ、エルバート様の方へと歩む
これで良い。
これで良かった。

これが遠い日のぬくもりを恋焦がれた、僕の正解だ

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クラウン内でまた死者が出た。

テルミー君、貴方はエルバート様と一緒に、逝ってしまったのですね

鈍感な私でも、すぐに分かりましたよ。

…本当に、愛し合っていたんだと 実感します。


だって こんなに穏やかな笑顔で、ずっと眠り続けているんですから

Fin
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12/24/2025, 1:13:59 PM