海へ
誰がくるか決まったか? そうか一人しか来ないか。まあ来るだけいい。こないだの地引網は正直酷かったもんなあ。朝5時から支度して網置いて子ども会総出で(親がもちろん主に引いて)とれたもんといったらイシモチが十匹とスズキとマダイが一匹ずつだったもんな。子どもたちはクラゲつついて喜んでたが。ともあれあの地引網で一人海に行きたい子がいて親もokなんだな? じゃあ明日から海だ。ここ伊栖摩では昔から海に行きたい子を海にやる。海に行きたい子はだいたい祖先も海にいたのだ。おれはそういう海に行きたい子どもたちを何人も送ってきた。あいつらは「行きたがった」それは確かだ。でもおれはときどき不安になる。海に行きたがる子どもたちの顔。ぎょろりとした大きな離れがちの目が平たい顔にのってる、あの顔立ち。あいつらが海に帰ると豊漁だ。最近はシラスもろくにとれねえ。あいつらは海に帰れ。
(このお話に出てくる伊栖摩市はアメリカのインスマウスと姉妹都市提携してると思います)
8/23/2024, 1:07:59 PM