スナエ

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 どこへでも行ける気がしたんだけどな。
 自転車に乗れるようになった少年は、結局は遠くへは行けなかった。
 他人は怖い。信用出来ない。
 ただ、両親が付き添ってくれる時だけ、彼は自転車に乗って出かけた。
「いつか、あなたにも他人の音楽を聴きたくなる時が来るかもしれない」
「いつか、おまえにも哲学を話したくなる相手が出来るかもしれない」
 母と父は、穏やかに笑う。いつも、ふたりは優しくて、少年は、こんな日々がいつまでも続けばいいのにと思った。

8/14/2023, 10:07:40 AM