彗皨

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『次は終点──終点───』
聞き慣れたアナウンスが静かな電車に響き渡る。
少し前まで急いで荷物を準備をしていた人も、肩を揺らしながら目を瞑っている。

「…」
よれたネクタイをつけている疲れきった顔をしたサラリーマンも
子供を連れた大荷物の妊婦さんも
スマホを眺めている学生も

『ご乗車ありがとうございました。
お忘れ物ないようご注意下さい。』

『この先もお気をつけて行ってらっしゃいませ。』

「っ、?こんなアナウンス、聞いたことないな。」
私がそう思った拍子に乗客が立ち上がる。
「ほら、行くよ。」
「はあ、、やっと家に帰れる…」
「あママ?もう心配しなくていいってー笑」

誰一人、アナウンスに対する違和感を感じずにいた。
「私も降りよっ…」

電車から黄色い点字ブロックに足を踏み入れたとき、
「へっ…何処、ここ………」

そこは、さっきまで同じ電車に乗っていた乗客と 私の知らない世界が広がっていた。

『この先も、どうぞお気をつけて。』


"終点"

8/11/2023, 8:10:40 AM