公園のベンチにふたりで座っていた。
「ねえ、生まれ変わりって信じる?」
貴女は、悲しい顔で私に問うた。
「信じるっていうか……あったら嬉しいな、くらいの感じです」
私は曖昧に答えた。貴女は眉を下げて、私と繋いだ右手に少し力を込めた。
「私、生まれ変わってもあなたと出逢いたいな」
貴女が言う。
私は、ただ頷いて貴女の話を聴く。
「もし生まれ変わった先であなたと出逢えたらね、またあなたを愛して、恋して…………結婚して、今度こそ離れずに、一生一緒にいたい」
貴女は繋いだ手を弛めて、自分の薬指と親指で、私の、まだ何も無い左手薬指を擽った。
私たちは、恋人だった。ついさっきまで。私が、結婚することになった、もう会えない、と告げるまでは。
親が決めた結婚だった。私には、どうあがいても覆せなかった。
貴女は、悲しい顔をしたけれど、別れを受け入れてくれた。別れたくないと、もっと駄々をこねてほしかった私は、すごく我儘だ。
「ねえ、生まれ変わったら、また会うんだって約束して」
私の横顔を真っ直ぐに見つめて、貴女が言った。私は、そちらを振り返れなくて、ただ俯いていた。
貴女が身を乗り出して、私の両手を掴み、私の身体を自分の方に向けさせた。私の顔を覗き込んで、無理やり視線を合わせてくる。その目は涙を湛えていた。
「お願い、その約束だけくれたら、私、大丈夫だから」
もうさよならなのに、あり得るかどうかもわからない再会の約束をするなんて、私には寂しすぎた。喉が詰まって声が出ない。でも、貴女のために、言わなければ。
「…………生まれ変わって、また、会いましょう」
なんとか声を絞り出した。貴女は頷いて、私の手を離し、立ち上がった。
「約束、絶対だからね!」
涙を拭ってそう言った貴女は、わざとらしくニッと笑った。そして、私に背を向けて、歩き出した。
貴女の背中が遠ざかっていく。
胸に押し寄せてくる痛みを抱えて、私はただ、その背中が見えなくなるまで、動くことができなかった。
11/14/2024, 8:03:49 AM