300字小説
唯一の話し相手
起きたら身だしなみを整え、朝食を食べる。そして観測にデータの記録。昼食後はトレーニング。夕食後は
『あの頃の私へ。元気かい? 私は変わらぬ日々を過ごしている……』
過去の自分にボイスメッセージを送る。
帰還艇に不備が見つかり衛星軌道基地から帰れなくなって一月。宇宙局は予備の帰還艇の打ち上げに尽力しているが、なかなか計画が進まない。自給自足の基地ゆえ、生命に別状はないが、やはりメンタルがキツイ。だから今日も私は唯一何でも話せる相手『過去の自分』にメッセージを送る。
『あの頃の私へ。やっと帰還艇に乗れた。今まで相手をありがとう。家に帰ったら、まず寝て……ずっと食べたかった味噌汁と梅干しおにぎりを食べるよ』
お題「あの頃の私へ」
5/24/2024, 11:53:34 AM