人魚姫じゃないんだから、
声は出るはずだった。
白雪姫じゃないんだから、
息をして、動けるはずだった。
だけど、私は結局、
童話の主人公のような
悲劇も、幸福も得られなかった。
臆病だったから
言うことも、行動することも
出来ないままで。
だから、この結末は必然なのだ。
言葉に出来なかった想いは
たぶん、ゆっくり壊死していくんだと思う。
報いかな。じくじく膿んでるみたいだ。
でも、これも恋だったんだ。
恋が果実の形をしていたとして。
私はそれを、あげることも、潰すことも、
捨てることすら出来なかったけど、
もう今はどろどろに溶けて見る影もないけど。
齧ったときの、甘い味も、苦い味も、酸っぱい味も、
全部ぜんぶ覚えてる。思い出せる。
言葉にできないような、
どろどろに腐敗した果実の味でさえ。
あーあ、こんなになってしまうなら
抱え込んでないで捨ててしまえば良かったな。
でも私は、あなたとこの果実を分け合って、
どうしても一緒に食べてみたかったんだ。
勇気が出なくて、手に持ったまま
あなたを見つめるばかりだったけど。
「言葉にできない」
4/11/2024, 1:05:14 PM