閉ざされた日記はいとも簡単に開いた。
閉ざされたとは名ばかりじゃないかと思ったが、
そんなことどうでも良くなるくらい興味深い内容だった。
私はその日記に綴られた世界に飛び込みたい衝動に駆られ、その願いが通じたのか門が開いた。
念の為手で門を抑えていたのだが、もう一目惚れだった。現実世界に未練はなかったので、
さっさとこっちに乗り換えることにした。
男が消えた部屋に、窓から風が入った。
ページがめくれ、日記は閉じた。
男は次の移住者が現れるまで、日記の制作を担当することになった。
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閉ざされた日記を解放していくのが私の仕事だ。
閉ざされているからにはそれなりの理由がある。
よほどプライベートなことだったり、
何かが隠したい機密事項があったり、
中には災厄が封印されていることもあった。
今回の依頼はこの日記。
亡くなった父親の遺品整理でみつかったらしい。
あーこれはたしか妻を殺した男の手記だったな。
気の毒だがその後の責任は負わないって契約ですから、
知ったことでは無い。
なぜ私がこんなことを知っているのかと言うと、
私の前職が依頼された日記を閉ざす、
「飛ばし屋」だったからだ。
1/18/2024, 12:08:47 PM