るに

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信号待ち。
日陰なんかどこにもない
ただ暑い日差しが痛い日だった。
この信号は長いから
なるべく待ちたくなかったのに
どうしても引っかかってしまって、
空を見ていた。
すると
なんだか猫のような少女が
信号待ちに来た。
まるでどこかで会ったことがあるかのように
猫みたいな少女は話し出す。
白雲峠においでよ。
狐に似た人も
フクロウに似た人も
私の師匠も待っているよ。
私は師匠と違って
猫又なのにしっぽが1本しかなかったの。
でも師匠は修行を積めとは言わなかった。
師匠はいつもこう言うんだ。
努力は必ず報われる、なんてことは
絶対に無いんだよ。
努力をしても越えられない壁にぶつかって
それでも努力を続けるから、
無駄な時間ばかりを過ごすんだよ。
私はそんな人を山ほど見てきたから
わかるんだ。
だから努力なんかしなくていい。
君は1本のしっぽでも十分強い、って。
こんな半人前の私でも
ここに居ていいんだって
そう思えた。
だから貴方も白雲峠に
またおいでよ。
誰かと間違われてるのかと思ったけど、
中々話の内容がわからなかったので
少女に目を向けてみる。
少女は猫目で黒髪の綺麗な人だった。
私の視線に気づいたのか
少女は続けて話す。
まあ、
その気になったらいつでも教えて。
あそこの神社に師匠と居るし。
そう言って少女は信号を渡ろうとした。
しかし、ハッと何か思い出したように
振り返り、
忘れるところだった。
貴方のこの先に、
神のご加護があらんことを。
と言って去っていった。
"Good Midnight!"
なんだか心強い一言をもらってしまった。
少し申し訳ない気持ちで
私も信号を渡る。
けど、
一体誰と間違われていたのやら。

9/5/2025, 4:05:41 PM