かり

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「あっ!やばっ!忘れた…」

朝教室に入ってみんながチョコレートを渡し合っているのを見て気付いた。

今日はバレンタインデーだ。

今日がバレンタインデーだということは知っていた。
そして、つい昨日チョコマフィンも沢山作った。
よし、明日渡そう。と決めていた。




「(家に置いてきてしまった…)」




冷蔵庫に入れっぱなしだった。




というのも、今日は渡したい男子がいた。


本命ではない。


いや、正確に言うと、本命候補。
というか、本命なんだけど直接は言えないからチョコレートで伝わればいいな…みたいな…

とにかく、お目当ての子がいる。

でもどうしよう。渡せないじゃん。





そんなこんなで授業が終わり、帰りの支度の時間になった。

仲のいい友達に渡せないのはいい。
いつでも渡せるし、毎日「ダイスキ♡」って言い合ってるからまだいい。

でも、彼には今日渡したかった。


彼は部活はやっておらず、帰宅部らしい。

このまま行けば、あの子は家に帰ってしまう。



どうする。どうする。さぁ、どうする私。




一応クラスメイトだから声をかけるのは抵抗ない。



「ねぇねぇ…あの…、なんかさ…今日はもう帰る感じ…?」

「うん、そうだよ。」

「あ…そうなんだ…そうだよね…」

「もしよかったらさ…もうちょっと学校に居れたりしない?」

「学校に…?うーん…まぁちょっとならいいけど。」



「私、家、すぐそこなんだけど、〇〇君にどうしても渡したいものかあって、今ダッシュで取ってくるから、


      ここで待ってて! 」





「…」











題:「待ってて」

2/14/2024, 5:58:11 AM