作家志望の高校生

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割れんばかりの歓声に包まれ、俺達3人はステージの表舞台へと駆け出していった。メンバーカラーのスポットライトに照らされて、それぞれらしい登場の仕方で。衣装も、精確も、そして熱意も。何もかもがバラバラな俺達は、それでも一つのグループだった。
ある大手アイドルスタジオから発表された、期待の新人男性アイドルユニット。それが俺達だった。メンバーカラーは赤、青、緑。それぞれの好きな色で適当に決めたらこうなった。そう、適当なのである。ユニット名も適当、ライブのセトリも適当。俺達は、とにかく性格面での相性が悪かった。1人は、真面目でアイドルへの熱意も高い青担当。練習も毎回1人残って夜遅くまでしているらしく、本番でも抜群の歌唱力とキレのあるダンスで観客を魅了する。しかし、真面目すぎるが故に堅物で、融通が利かないのが玉に瑕だ。そんな彼と相性最悪なのが、軽薄そうでチャラチャラしている赤担当。天性の才能から来るダンスや歌は確かに舌を巻くものがあるのだが、いかにも遊び人といった風貌とヘラヘラした態度はつくづく相性が悪かった。アイドルへの熱意も赤担当の彼が一番低く、受かったからなったといえ曖昧な理由だけでアイドルをやっている。俺は、そんな2人の緩衝材のためだけに入れられたようなものだった。良くも悪くも全てが平凡、前2人のように、特別な才能も、目を瞠るような熱意も無い。顔だって2人の放つ別ジャンルの輝きの間では空気みたいなものだし、グループとしてのファンは居ても、俺単推しのファンはほとんど居なかった。
けれど、そんな俺達は意外なことに、それぞれのメンバーを一人で推す、というよりはグループ箱推しのファンが多かった。一人一人の個性が強すぎるせいで、通常ならば単推しのファンが多そうなものだが。
ステージの上でだけ、俺達は仲良くなれる。ライバルとして、親友としての振る舞いができる。ダンスや歌の相性だけは抜群なのだ。歌ならば、低く、指示通りに歌う青の彼と、少し高く、アレンジが多い赤の彼。そんな2人の間を、俺が繋ぐ。ダンスでは、手本通りの振り付けを完璧にこなす青と、かなり自己流で踊る赤を俺がカバーしながら自然に見せる。はっきり言って、相性は最悪だが、この3人でしか成立し得ないユニットでもあった。
メンバーカラーのスポットライトは、ステージの上に俺達が上がりきると中央に集中する。
三原色のそれは、重なり合って何より眩しい白となる。バラバラな俺達でも、俺達でなければこの白で観客を照らすことはできないから。
俺達は3人、背中合わせで、振動するスピーカーを、揺れ動く白色のペンライトを見つめていた。


テーマ:Red, Green, Blue

9/10/2025, 10:38:32 PM