とある恋人たちの日常。

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 仕事以外で、彼と会うのは珍しい。
 彼が近くにいるのは分かっていたけれど、声をかけていいのか分からず、どうしたらいいか迷っていた。
 
「あれ、こんにちは!!」
 
 見つけてくれたようで、後ろから彼が声をかけてくれる。
 
「こんにちは!」
「元気? 怪我してない?」
 
 会う時はいつも怪我をしているから、真っ先に怪我の心配をしてくれる。優しい人だ。
 
「大丈夫です、元気です!」
「そっか、良かった。あ……」
 
 彼は私の返答に安心して笑顔になってくれるけれど、何かを思い出したみたいだった。
 
「あのさ、新しくクリームソーダが発売されたみたいなんだけれど、一緒に買いに行かない?」
 
 その言葉に驚くと同時に胸が高鳴ってしまう。ドキドキしてしまうのを顔に出さないように必死で笑顔を返した。
 
「え、良いんですか?」
 
 彼はクリームソーダが大好きなことで有名な人で、私も好きだと知った彼は色々連れていってくれるようになった。
 それだけじゃなく、私が仕事ばかりでこの都市の楽しいことを全く知らないことを知ったのもある。
 
「もちろん、今からでも良い?」
 
 屈託のない眩しい笑顔を向けてくれる。
 仕事にはまだ余裕があるから、彼に向けて全力の笑顔を返した。
 
「わーい、楽しみー!」
「じゃあ……どうしよう。俺バイクだけど……後ろ、乗る?」
「乗るー!」
 
 条件反射で返事をしてしまった。
 だって後ろに乗せてくれるなんて嬉しいもん。
 
 私は近くの駐車場を探して、彼とそこで待ち合わせをする。駐車場に車を停めて出ていくと、入口にバイクを停めて待っていてくれた。
 
「じゃあ、行こうか!」
「はい!!」
 
 バイクに跨り、彼に掴まるとどうしてもドキドキしてしまう。
 
 きっと彼はなんとも思っていないと思う。けれど私には嬉しい時間で、このまま時が止まってしまえばいい……。そんなふうに思ってしまった。
 
 
 
おわり
 
 
 
一二六、時間よ止まれ

9/19/2024, 11:38:39 AM