深夜徘徊猫

Open App

「ひとひら」

 今から遊びに行こう。と夜遅くに届いたメッセージにあった人気のない公園に着くと私の親友が桜の花びらの絨毯に寝転んでいた。

「葵。なにしてるの?」

「んー?地面に落ちた桜の花びら数えてるの。」

 桜の花びらは絨毯と先ほど述べたように、数えきれないほど散らばっており、数えるには無謀な数に思えた。何故数えているのか。そう尋ねようとしたところ、葵が遮った。

「桜の花びらってさ、流れ星みたいだよね。よく言うじゃん。地面に落ちる前に手にした桜の花びらは願いが叶うとか。」

「でも実際、流れ星って宇宙の塵とからしいね。それが大気圏に入ろうとしてー燃えてーみたいな?要は塵に私たちは願いを託してるんだってねー。そう思うと馬鹿馬鹿しいや。」

 葵はそう言った後、数えていたたくさんの花びらを私に思いっきり浴びせた。突然のことでびっくりする。

「でも、桜の花びら。要は地球の方の流れ星は残り続けてくれるし、流れ星としての短い役割を終えた後も輝き続ける。ましてや塵でもないしね。こっちの方がずっと良くない?」

「なにそれ。…。でもまぁ確かにその通りなのかもね。」

 私の体に塗れた夜桜たちは月に照らされ、本当に星のように輝いた。自然と涙が溢れる。

「…宇宙飛行士はやっぱりだめだった?」

「…うん。」
 私は実は宇宙飛行士になりたかった。でも、学費の関係で親に諦めて欲しいと言われた。私も親に負担はかけたく無かった。だから、やめた。私は地球で遠い星を見るしか無かった。今日、葵が私を呼んだのも、こんな話をしてくれたのも全部私を慰めようとしてくれていたのだ。

 私は落ちてくる桜の花びらを手に乗せた。この桜の花びらは夢として選ばれた。人間で言う勝ち組の人だ。私は落ちた方。でも、ここなら輝き続けるられる。

 ひとひら。ふたひら…。

 私の夢が流れ星のように選ばれる日はもうこないから。宇宙の流れ星にはなれないから。地球の落ちた星として輝き続けなければならないのだ。

4/13/2025, 3:17:26 PM