喜村

Open App

 子どもの泣き声で目が覚めた。
またか、と、俺は布団に潜り込む。

 毎朝毎朝、耳をつんざくような、この世の終わりのような、甲高い声が響いてくる。
 うるさいを通り越して、恐怖さえ感じるほどだ。えーんえーん、ではなく、ギャーキャーだ。
 いつもこれが三十分程近く続くが、毎朝いったい何をしているのだろう?
 隣の一軒家から聞こえてくるのは確実で、カーテンの隙間から俺はその方向をみた。

 そして、目を疑う光景をみた。

 母親と思われる女性が、フライパンを子どもの腕に押し当てているのが、リビングと思われる窓から見えたのだ。
きっと熱々なのだろう、子どもの腕の皮が赤くめくりあがっていた。

「え、ちょ、なにやってんの!?」

 俺は眠気眼をこすりながら、検索をかける。
『虐待 連絡』
 迷いはなかった。すぐに記載されている連絡先に震えながら電話をする。

 早く助けなければ、届いて……!

【届いて……】

7/9/2025, 10:29:53 AM