(※二次創作)(大好きな君に)
――大好きなキミに。
突然こんな手紙を書くことを許してほしい。僕は、初めて会った時から、キミのことが好きだったんだ。牧場主として右も左も判らない僕は、少しでも何かアドバイスが得られないかと藁にもすがる思いで、キミの図書館に行った。それまでろくに本屋にすら行ったことのなかった僕は、当然、本の山の前で立ち尽くすしかなかったんだけど、キミはそんな僕に優しく手を差し伸べてくれた。初対面なのに、親切にしてくれた。その日から、僕は、時間があれば図書館に通うようになったんだ。
キミは僕に本当によくしてくれた。仕事に関係ないジャンルの面白い本も、いっぱい教えてくれた。キミだけが書いている秘密の物語も、こっそり読ませてくれた。僕はそのひとつひとつが、本当に嬉しかったんだ。
だから、僕は、キミのことが――。
「お、そろそろいい感じかな」
牧場主ピートは顔をあげた。手には、昨夜一晩かけて書き上げた懇親のラブレターがある。そんなピートの鼻腔を、何とも言えない香ばしい匂いがくすぐった。空は晴れ、風は少ない。絶好のチャンスだった。
「…………」
ラブレターを、くしゃくしゃと丸める。これは届くことのない手紙だ。マリーはもちろん、他の誰にも読ませるつもりはない。ぱちぱちと、火の爆ぜる音がする。ピートはそのまま、目の前の焚火にラブレターを放り込んだ。
マリーが、鍛冶師見習いのグレイと結婚したのは、つい昨日の話だ。
ピートはマリーのことが好きだったけれど、告白一つできないままに、彼女は別の男を選んだ。確かに、毎週木曜日、鍛冶屋が休みの日は、グレイを図書館でよく見かけた。今更気付いたって後の祭りだけども。
「お、焼けてる焼けてる」
焚火の中には、アルミホイルに包んだサツマイモが幾つか入っている。一つ取り出してかぶりつけば、素朴な自然の甘みが広がった。
3/5/2024, 1:13:34 AM