【エイプリルフール】
「☓☓ちゃん、だいっきらい」
私しかいないはずの文芸部部室に、彼女の声だけがこだまする。
「急に何? ああ、エイプリルフールね」
いつも通りのダル絡みだ。慣れてる私はページをめくる手を止めない。
キーンコーンカーンコーン。
12時のチャイムが鳴る。
「正解。嘘でした〜」
チャイムが鳴り止むのを待ってから彼女は答えた。
「はいはい、私も好きですよ」
私もいつも通り、適当に返しておく。
「…え?」
彼女の間抜けな声を聞き、私は手を止めた。
「ん?」
予想外の反応に、思わず顔を上げる。
「もう午後だからネタバラシの時間だよ…?」
視線を逸らしながら、彼女は呟く。
「…あっ」
じわじわと、私も顔が熱くなる。
「えへへ」
「ニヤつくな!」
彼女と話すと、いつも調子が狂う。
素直になれない私は、外の桜へ視線を逃がすのだった。
4/1/2026, 4:10:21 PM