「燃える葉」
9月終わりの放課後
どことなく浮ついた教室の雰囲気に、なんとなく取り残された気がする、ひとつだけの影。
私は誰の目も合わせずに帰路に着いた。
少し前に、近所のおばさんに、「この前の英語のテストよかったんだってねぇ、うちの息子も見習って欲しいわ」と、言われた。
母親はあまり近所の人と交流はしないので、どこかで私の情報が漏れてるのだろう。
私のことなのに、私がいない世界で勝手に自分のことが広まっている、知られている。
そこに、私はおらず、輪郭だけが不透明に描かれている。
気持ち悪くて、吐き気がして、家へ帰って私はトイレに駆け込んだ。
涙が止まらず、嗚咽を漏らし続けた。
いつ、誰が私を見ているかも分からない。
もしかしたら、今この瞬間も誰かがみているかもしれない。
恐くて、恐くて、布団にくるまり、自身を抱きしめ、その日の晩はずっと震えていた。
私は次第に学校へ行かなくなった。
外へ出るのが怖くなった。
太陽にさえも笑われているような気がして、足が震えた。
この世界で誰1人私の味方はいない、そう感じた。
でも、それでも、この移り変わる景色は美しかった。
まるで、一つ一つ手編みされた絨毯のようで、紅、黄、茶、と、彩られ、夏の暑さを包み込む優しい風のように、私を包み込んだ。
ふと目に入ったもみじの栞。
小さい頃に拾った大きなもみじ
それを本の栞にしてもらい、私はその栞を使うために本を読んでいた。
本は好きだ。
本は、私に静かに語りかけてくれる。
本は私を受け入れてくれる。
言の葉は、私と本を、紡いでくれる。
私は布団からそっと顔を出し、紅葉に染る木々をそっと眺めた。
ふと見た、山々の葉は燃えるように叫んでいた。
10/6/2025, 4:45:07 PM