※BLです。苦手な方は飛ばしてください。
恋とか愛とか、そんなもの俺の人生には必要ないと思ってた。そんなものがなくても自分の好きなことはできている。だから、なくても生きていけると本気で思ってたんだ。思ってたんだけどなぁ。
「先輩!朝ですよ!ほら、起きて起きて」
カーテンの開く音と、朝から元気な声で目が覚める。眩しい朝の気配に、目を擦りながら体を起こすと、太陽の光を背にして嬉しそうに笑う姿が目に入ってきた。
「今日もいい天気っすよ!」
ほら、見て見て!と窓を指す姿が子供みたいに可愛くて、無意識に口元が緩む。
朝起きて好きな奴の笑顔を見ることが、こんなにも嬉しいなんて。
毎日、好きな奴とおはようと言い合って一日が始まることが、こんなにも幸せだなんて。
お前に出逢ってから恋をして、愛を知って。一分一秒、好きが増えていく。
もう手離せねぇな。
失いたくない弱さも同時に知ったけれど、手離すつもりなどさらさらない。
以前の俺はどんなだったか、もう思い出せないほど一緒に過ごした日々は色濃く俺の胸に焼き付いて。幸せにしたいと想う気持ちがとめどなく溢れ出す。
周りの奴らにも驚かれるほど、こいつと一緒にいる時の俺は表情が柔らかいらしい。気を許している、といえばそうなんだろう。かっこ悪いところも弱いところも、全部見せてきた。そんな俺でも好きだと言ってお前は笑ってくれる。でも、きっとお前が俺を想う気持ちよりも俺の方が大きいはずだ。
「……こんなに好きになるなんてな」
「え? なんか言いました?」
いつのまにか俺の隣に腰掛け、顔を覗き込んでくる。
「んー? お前のことすげぇ好きだなって」
いつもは言わない言葉もするりと口から飛び出した。驚いたように固まって、すぐにじわじわ頬を染めていく様子がかわいくて、ますます好きが溢れ出す。
「なぁ、お前は?」
俺と出逢って、俺と一緒に過ごして、出逢う前よりも幸せだと思ってくれてる?
「っ……わかってますよね!?」
赤らめた頬をぷくりと膨らませる姿に満足して、逃さないよう腕を回して抱き寄せた。
5/5/2023, 1:09:44 PM