白糸馨月

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お題『手を繋いで』

 ギャラリーがさわがしい。それもそうだ。俺は今、腕相撲大会に参加していて、もう九連勝している。十連勝すれば優勝が決まり、賞金が貰えるんだ。
 次、絶対に勝つぞと息巻いていると次の対戦相手が向かいの席に座る。
 俺は目を疑った。可憐な少女だったからだ。年の頃は大体女子高生か? まぁいい、相手が女の子だろうと容赦はしない。俺には優勝がかかってるんだから。
 そうして、俺は少女と手を組む。白い肌に小さい手、肌質も俺みたいに血管が浮き出た筋肉質なものよりもずっとやわらかい。女の子と手を繋ぐ機会なんて普段まったくない。正直、役得か。
 そんなことを考えてる時に「レディ、ファイッ!」と掛け声がかかる。
 相手が女の子だろうと負けるわけにはいかない。悪く思うなよ。そう手に力を込めた瞬間、少女の手の甲に血管が浮きできたのが見えて、気がついた時には俺の手の甲がテーブルの上に叩きつけられていた。あまりの衝撃に痛みを感じる間もなかった。
 周りから歓声が上がる。俺は今の状況に混乱しながら少女から手をはなすと、ギャラリーの声援に押し流されるように勝負の場を後にする。
 その後も勝負が続いた結果、少女が優勝した。俺はそれまでの間、茫然自失の様子でそれを見続けていた。
 

12/9/2024, 11:40:18 PM