「お前はどう思ってんの」
「どうって、何を」
「俺と一緒にいること」
「……」
「俺は楽しいよ」
愛寧は言葉に詰まった。空閑が立ち止まり、愛寧の方へ向き直る。自宅は目と鼻の先にあるのだから、はぐらかして逃げ帰ることもできた。しかし、愛寧にはそれができなかった。彼がいつになく真剣な表情でこちらを見据えている。
「好きなんだ、お前のこと」
愛寧はますます言葉に詰まって、目を泳がせた。
最近の空閑はやたら自分とふたりで帰りたがっていたから、何となく疑ってはいた。しかしそれは単なる自意識過剰でしかないと、愛寧の中で結論付けていた。
彼と過ごしてきた記憶を遡る。別れが名残惜しいと感じた時もあれば、一刻も早く会話を終わらせたくなった時もある。
「今は答えられない。ごめんなさい」
「俺の方こそ、急にごめん。返事はいつでもいいから」
空閑はそう言い残して去って行った。全身の力が抜け、ふらふらと自宅の玄関へ入る。ドアの鍵を閉めると、愛寧はその場にへたり込んだ。
「私は、空閑のことが――」
【答えは、まだ】
9/17/2025, 7:59:55 AM